次世代低コスト太陽電池として今後の産業化が大きく期待されている色素増感型太陽電池は、アモルファスシリコン太陽電池に匹敵する変換効率に加え、その製造プロセスに大きなエネルギーを要しないため、高速大量生産の可能性がある。この太陽電池は、可視光領域に幅広い吸収を持つ色素を固定した多孔質セラミック薄膜を光作用極とし、白金もしくは炭素の対極との間にヨウ化物イオンとヨウ素を含む有機溶液を封じたものである。しかし、実用化を考えた場合、この電解質溶液部分を固体化することは、長期の安定性を確保するためには非常に重要である。本研究では、高濃度の電解質を含んだポリマーゲルを用いた固体化を適用し、高温で安定で変換効率の高い素子の作製を検討する。また、ポリマーの分子設計により、機械的強度が高いポリマーによる自立型膜の構築や、導電性高分子の対極への適用を行い、これまで必須の導電性ガラスを使わない素子の作製も試みる。 イオン性液体であるヨウ化イミダゾリウム塩にメタクリル酸誘導体と、AIBNを重合開始剤として加えた溶液を、色素担持酸化チタン薄膜に充填し、熱重合した後に昇華法によってヨウ素を含浸させて擬固体作用極を作製した。対極には、大気雰囲気下でも伝導度が高く安定な導電性高分子、ポリジオキシチオフェンを用いた。ゲル化に最適なAIBN濃度、最大の光電流を与えるヨウ素の濃度を最適化し、最大変換効率3.8%の擬固体型色素増感太陽電池の作製に成功した。この素子は高分子によって固体化したため、封止をしない状況下でも3ヶ月以上にわたって安定な性能を示した。
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