研究概要 |
概日リズムの体内時計の時刻発振の分子機構は、positive-negative feedback機構であると想定されている。この分子機構には転写抑制因子であるPerの核内移行や分解が重要なステップであると考えられている。そこで哺乳類体内時計の分子機構の解明を目的としてCK1εによるPerの核内移行・分解に関与するPer1のリン酸化部位について研究を行った。 培養細胞にmPersとCK1ε強制発現させた結果、CK1εはmPersと結合・リン酸化して、mPer1,3をリン酸化依存的に核内移行させる事を確認した。mPer1を5つに断片化して、GST融合蛋白質を作成し、in vitro kinase assay法を用いてCK1εによるリン酸化部位を調べたところリン酸化領域を3ケ所同定した。このmPer1のリン酸化領域内のセリン/スレオニン残基をアラニン残基に置換した変異体を作成し変異体間でのリン酸化の差異、細胞内局在の変化を調べた。その結果、714番目のセリン残基が他の領域のリン酸化を制御し分解に関与している可能性が示唆された。変異体を培養細胞に強制発現させ,細胞染色を行ったところ、S[653-663]A変異体では核内移行しなかった。そこで、リン酸化依存的な核内移行を示さないmPer2にmPer1 652-667aaを導入させた変異体を作成しところ、CK1εとの共発現において核内移行を示した.さらに、mPer1 653-663aa内に存在する7つのセリン/スレオニン残基を1つずつアラニン残基に置換した変異体を作成し強制発現させた。その結果661と663番目のセリン残基のリン酸化がmPer1の核内移行に重要であると示唆された。このリン酸化部位は、Per1がPer2,Cry1,CK1εと複合体を形成して核内移行する時にも重要な部位であると考えられる。
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