研究概要 |
本年度は、TLR3やTLR4のシグナル伝達分子の一つとして報告されているI-κB kinase (IKK)関連分子であるIKK-iやTBK1それぞれの遺伝子欠損マウスの解析を行った。TBK1欠損マウスは致死であるため、胎仔より繊維芽細胞(EF)を調整し実験を行った。IKK-i欠損またはTBK1欠損細胞は、ともにTNF-αやIL-1β,TLR4リガンドであるリポポリサッカライド(LSP)やTLR2リガンドである細菌由来リポペプチドに反応して正常細胞と同程度のIL-6の産生を認めた。さらに、LPS刺激によるIFN-βやIFN誘導性遺伝子であるISG54やIP-10などの遺伝子発現を検討したところ、TBK1欠損細胞でのみこれら遺伝子の発現が減少していた。さらに、これらEFを二本鎖RNAのアナログであるpoly(I:C)で刺激したところ、IKK-i欠損細胞は正常細胞と同様な反応を示すが、TBK1欠損細胞でIFN-βやIFN誘導性遺伝子の発現誘導が障害されていた。さらに、IKK-i/TBK1両遺伝子欠損細胞は、poly(I:C)によるIFN-β誘導が完全に消失し、IKK-iもpoly(I:C)刺激において、IFN-βの産生誘導に関与していることが判明した。また、これらIFN-βやIFN誘導性遺伝子の発現に関与している転写因子IRF-3の活性化がTBK1欠損細胞では障害されていた。さらには、センダイウイルスなどによるこれらIFN-βやIFN誘導性遺伝子の誘導もTBK1欠損細胞で障害され、TBK1がTLR4やウイルス感染によるIFN-βやIFN誘導性遺伝子の発現誘導に重要な役割を担っていることが判明した。この研究成果は、現在投稿中である。 このほか、TLRファミリー分のアダプター分子の機能解析や、TLR7やTLR8のリガンドの探索にも参画した。
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