乳癌治療に汎用される抗癌剤(docetaxel)の感受性に関与する遺伝子群を同定するために以下の検討を行った。乳癌症例(44例)より乳癌組織を生検採取した後、docetaxel(60mg/m^2q3w)による化学療法を実施した。乳癌組織における2453遺伝子の発現をATAC-RCR法を用いて網羅的に解析し、治療効果との関連を種々の統計的手法で解析した(Permutation Test、k-Nearest Neighbor法、Signal to Noise法など)。その結果、docetaxelの感受性に関与すると思われる91遺伝子を同定し得た。次に、新規の乳癌症例(26例)を対象として、この91遺伝子の乳癌組織での発現をATAC-PCR法で解析した結果(validation study)、77%の精度でdocetaxelの治療効果を予測できることが確認された。 また、docetaxel耐性例において高発現する遺伝子の内、3つの遺伝子をそれぞれヒト乳癌細胞株(MCF-7)に遺伝子導入し強制発現させ、次に、docetaxelに24時間接触させた後、TUNEL法にてapoptosisに陥っている細胞の割合を評価した。その結果コントロール細胞に比べて遺伝子導入細胞では有意に細胞死の割合が減少していることが判明した。以上の結果より、これらの3つの遺伝子がdocetaxel耐性獲得に於いて重要な役割を果たしていることが強く示唆された。
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