研究概要 |
本年度の研究は主に,ロシアでの原生代後期のErga Formationについての堆積環境と産出化石についての調査と,ナミビアでの原生代後期のOtavi Groupに含まれる氷河堆積物とそれを覆う炭酸塩岩にみられる堆積構造の調査を行った.ロシアでの調査によって,原生代後期のデルタからプロデルタの堆積物の中に多様な多細胞生物の化石が含まれることがわかった.また,これらの化石は,運動の痕跡と思われる生痕をしばしば伴うことを確認することができた.ナミビアでの調査でも,原生代後期の多細胞生物の化石を発見した.ロシアの化石と合わせてその形態を調べたところ,基本的な構造に重要な非対称性が存在することを発見した.左手系,右手系の両タイプが確認され,その量比もほぼ一対一であることが明らかになった.また,非対称性をマーカーとした成長解析によっていくつかの種について成長方向を特定することができた.また,ナミビアでの調査で原生代後期の氷河堆積物に挟まれる縞状鉄鉱層を発見した.氷河堆積物の中にはクライミングリップルなど流れの存在を示す構造が頻繁に現れることを発見し,氷河時代の継続性について検討をはじめている.また,土石流堆積物と氷河堆積物をミクロな堆積構造のマクロな分布パターンから判定する方法の開発を進めている.また,氷河堆積物を覆う炭酸塩岩に見られた垂直構造について,これまでの記載を統一する見解をまとめた.また,垂直構造を含む堆積シーケンスが,世界的に共通して見られることを発見した.
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