GA(ジベレリン)は、発芽や茎伸長を促進させる植物ホルモンである。これまでの申請者によるイネを材料としたGAの作用機構の研究は、細胞に受容されたGAのシグナルが核で機能している抑制因子、SLR1タンパク質を分解することで一連の生命現象を引き起こすことを明らかにした。さらに、このSLR1の分解はユビキチンリガーゼ複合体SCF^<GID2>を介したユビキチン/プロテオゾーム経路によって制御されていることを明らかにした。 今年度は、第一にSLR1のリン酸化修飾について解析を行った。その結果、SLR1はN末端側のDELLA/TVHYNP及びpolyS/T/V領域でリン酸化されていることが示唆された。しかしながら、これらの領域におけるリン酸化はGA依存的に誘導されなかった。さらに、以前に確立していたGID2タンパク質との試験官内での結合実験の結果、SLR1とGID2の結合が脱リン酸化処理を行ったSLR1に対しても同様に起こることを確認した。これら一連の結果は、GAシグナル依存的なSLR1の分解にリン酸化が関与していないということを示している。 第二に、SCF複合体の側からGA情報伝達機構の解析を試みた。これについてはもっとも研究が盛んなアラビドプシスを実験材料として用いた。本年度はSCF複合体のコアサブユニットの1つであるCUL1とCAND1タンパク質との相互作用を解析した。CAND1はCUL1タンパク質と結合するタンパク質として動物細胞より単離されたタンパク質であり、この相互作用を介してCUL1はアラビドプシスゲノムによってコードされている700以上のF-boxタンパク質と結合して様々なSCF複合体を形成できると考えられている。しかしながら、植物においてこの両者のCUL1/CAND1間相互作用をクリアに示した結果はない。申請者はcross-linking法を用いてin vivoでの両者のタンパク質間相互作用を確認する実験系を確立した。今後はこの実験系を用いてCUL1/CAND1相互作用がどのように制御されているのかを観察できると考えている。
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