1.2002年4月より、調査地である大台ヶ原に生育する2種のササの葉と8樹種の樹皮の栄養成分を分析した。この結果と、あらかじめ得られていた剥皮における樹種選択性指数との相関を調べたところ、どの分析項目とも相関が無いという結果を得た。またこの結果を基に論文を1編作成した。 2.2002年8月〜11月にかけて、調査地においてニホンジカのルーメン液を用いたin vitro培養試験を2週間×3回おこなった。すなわち、ニホンジカの主食であるミヤコザサに樹皮を5%混合した試料と、ミヤコザサ単体の試料をそれぞれ培養し、発酵過程の違いについて調べた。その結果、発酵に伴うpHの時間的変化については両者に差は見られなかったが、ルーメンガスの発生量については、単体試料よりも混合試料のほうが多いことが明らかとなった。この結果から、樹皮の摂食物中にしめる割合が大きくなくとも、ルーメン発酵に影響を及ぼすことが明らかとなった。これに加えて、来年度の春と夏に同様の試験をおこなう予定である。 3.2002年8月より、大台ヶ原においてニホンジカの血液サンプルの採取をおこない、17個体分のサンプルを得た。来年も同様のサンプリングをおこない、血中Ca、Mg濃度の調査をする。 4.2002年日本哺乳類学会(富山大学)において、主催者の一人として西日本のニホンジカ研究に関する自由集会を開催し、またこの場において、本研究課題の一部(剥皮における樹種選択性)についての発表をおこなった。
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