C.elegansにおいてカルシウム/カルモジュリン依存性の脱リン酸化酵素であるカルシニューリンは、感覚ニューロンの感度を調節している。本研究では、C.elegansカルシニユーリン機能低下変異体tax-6(p675)の異常表現型を抑圧する変異を遺伝学的に単離し、その原因遺伝子を同定・解析することにより神経系におけるカルシニューリンが関与する情報伝達機構を明らかにする。平成14年度の研究ではtax-6(p675)変異体を突然変異原であるエチルメタンスルホン酸(EMS)で処理し、その子孫(F2)からtax-6(p675)変異の表現型が部分的に回復した抑圧変異体候補を単離した。1次スクリーニングとして、約5000ゲノムのtax-6(p675)変異体をEMSで処理し、F2世代でtax-6(p675)変異体が示す体の大きさの異常を部分的に抑圧する変異体候補A602-10-1を単離した。この変異体候補A602-10-1に関して、2次スクリーニングとして、tax-6(p675)変異体が示す行動異常が正常に回復するか解析を行った。温度走性行動、NaClに対する化学走性行動解析を行った結果、変異体候補A602-10-1はtax-6(p675)変異体と同様の行動異常を示した。これらのことから、変異体候補A602-10-1の原因遺伝子はC.elegansにおいて体の大きさの制御にのみ関与する遺伝子であることが示唆される。tax-6(p675)変異体が示す体の大きさの異常は、感覚ニューロンでtax-6cDNAを発現させることでレスキューされることから、変異体候補A602-10-1の原因遺伝子も同様に感覚ニューロンで機能している可能性が考えられる。
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