整然とした神経回路網の形成には、あるニューロンからそのターゲットへの正確な神経投射が保証されなければならない。古典的な移植実験より、神経軸索の標的特異的な投射、すなわち神経軸索のガイダンスには分子レベルでの制御メカニズムが存在することが示唆されていた。セマフォリンは神経軸索の身長を阻害する因子として同定された分泌型/膜貫通型のタンパク分子である。現在までに、脊椎動物には約20のセマフォリン相同分子が存在することが示されている。本研究では、新規に単離したセマフォリン、Sema6Dの機能解析を行っている。現在までに、in vitro binding assayを用いた実験より、Sema6Dの受容体としてPlexin-A1と呼ばれる膜貫通型タンパク分子を同定している。In situ hybridization法により、マウス脳においてのSema6Dおよびplexin-A1の発現部位および発現時期の検討を行った。その結果、胎生15-17日においてPlexin-A1は下丘に、Sema6Dは下丘を囲む領域に強い発現が見られることが明らかになった。培養下における下丘由来の神経細胞に対するSema6Dの作用を検討した結果、Sema6D存在下では下丘神経細胞の神経突起伸長が阻害されることが明らかになった。更にSema6Dの機能解析を行うためにSema6D遺伝子機能破壊マウスの作成を進めている。
|