本年度の研究によって、以下の諸点を明らかにした。 1.GATA1の二量体形成とp300の相互作用の関係を検討するために、GATA1の6ヶ所のリジン残基をアラニンへ置換したGATA1(KA6と略)とp300の間の相互作用を解析した。その結果、KA6変異は、野生型に比べてp300との結合を低下させた。続いて、リジン残基の置換を前半部の2ヶ所と後半部の4ヶ所に分けたKA2およびKA4変異体を作製し、相互作用の詳細な解析を行った。GATA1の二量体形成は、KA6に比べて、KA2およびKA4の場合に部分的に低下した。これに対して、p300との相互作用は、KA6と同様に大きく低下することが明かとなった。 2.GATA1によるgata1自身の活性化におけるKA2およびKA4の効果を検討するため、内在性gata1を再現して発光するトランスジェニックゼブラフィツシュ系統の初期胚に変異GATA1の過剰発現を行った。GFP発現誘導は、野生型に比べて部分的に低下することが明らかとなった。 3.gata1変異胚と野生胚を用いたサブトラクション法により同定されたGATA1の新規標的遺伝子pbrの発現をin situ hybridization法を用いて解析した。盤割期、胞胚期では、細胞全体に発現していた。原腸胚期、尾芽期では低下し、体節期では造血部位および前腎管で発現が観察された。この造血部位での発現は、gata1変異胚で大きく低下したが、前腎管での発現に変化は見られないことが明らかとなった。
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