外国において特殊教育を必要とする児童生徒の教育の機会均等化を促進するために求められる実現性のある解決策や対策を提言するため、今年度は以下の研究を行った。 (1)アメリカ合衆国におけるバイリンガル特殊教育の発展過程と現状についての研究 アメリカ合衆国におけるバイリンガル特殊教育の発展過程に焦点をあて、自然言語保障が制度に組み込まれるきっかけとなった判例を検討し、それを保障している制度を主として法令から分析した(一部は論文投稿、学会発表済み)。さらに、理念と制度実施に関する具体的方策について明らかにするため、アメリカ合衆国で州法として唯一、バイリンガル特殊教育法を有すイリノイ州の日本人児童生徒の集住地域の学校区の障害のある日本人児童生徒への教育実践を観察、学校関係者、当該教育委員会担当者に面接調査を行った(現在分析中)。また、ニューヨーク市のバイリンガル特殊教育担当者との話し合いで、情報・資料収集を行った。 (2)シンガポールにおける障害のある日本人児童生徒の現状についての研究 シンガポールにおける障害のある日本人児童生徒の現状について、今後の調査進行(調査用紙作成のためなど)に必要な最新の情報を福祉機関の関係者より聞き取り、また、日本からでは入手困難な資料を複写してきた。さらに、障害のある日本人が通っているAspen Centreに訪れ、様子を見学し保護者からセンター設立の経緯や利点・改善点についての聞き取りを行った。また、現地の特殊教育学校高等部に通う日本人生徒の活動を観察し、教員及び保護者から聞き取り調査を行った。その他、将来、卒業後も現地に留まる可能性が高い児童のため日本人学校でコミュニケーション・カードの作成を行った。帰国予定の保護者からは、帰国に向けての期待や不安などを聞き取った。(現在、執筆中) (3)日本国内における障害のある日本人児童生徒の現状についての研究 東京の国際養護学校で週に1度程度の授業観察を実施し子どもおよび学校の実態把握につとめた。また、当該校の研究会にて日本にいる障害のある外国人児童生徒についての状況を発表した。また、外国人が集住している地域(群馬県・愛知県・静岡県)の学校を訪問し、対象児童生徒の授業観察をし、その教育に関する問題及び今後の取り組みを学校関係者及び保護者への面接調査を行った(一部、論文投稿、学会発表済み)。
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