1.2002年9月12日〜2003年3月5日の間、ドイツ連邦共和国、バイロイト大学、バイエルン地球科学研究所に滞在した。滞在期間中、Dubrovinsky博士(バイロイト大学)と共同で、抵抗加熱式ダイアモンドアンビルセル(外熱DAC)装置を用いて、高圧含水相である含水D相の高圧相平衡実験を行なった。その結果、含水D相は67GPa(深さ1600km)、550℃までは安定であることが分かった。また、実験と平行して外熱DACの技術を習得した。帰国後、Dubrovinsky博士協力の元、外熱DACの東京工業大学への設置を開始した。 2.沈み込む含水カンラン岩を代表する蛇紋石鉱物アンティゴライトの高圧相平衡X線その場観察(大型放射光施設SPring-8(兵庫県)にて行なった)の結果を、Journal of Geophysical Research誌に投稿した。沈み込み帯で観測される二重深発地震面(アンティゴライトの脱水反応起源と考えられている)と放射光実験により精密決定したアンティゴライトの状態図を比較することにより、世界中の沈み込み帯のうち、東北日本、アリューシャン、カムチャッカでは、沈み込むプレートにより、マントル深部(410km以深)に水が運び込まれている可能性があることを示した。 3.「30GPa(深さ800km)、1600℃までの沈み込む含水カンラン岩に対する岩石成因論的グリッド」を国内(地球惑星科学合同大会、5月、代々木、口頭)、海外(米国地球物理学連合(AGU)、12月、米国サンフランシスコ、ポスター)それぞれの学会で発表した。高圧下での含水カンラン岩に対する、含水鉱物(高圧型含水マグネシウムケイ酸塩)を含む内部矛盾のない反応曲線網(グリッド)を世界で初めて構築した。そのグリッドを基に、沈み込むカンラン岩による水輸送の機構を論じた。
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