酸化亜鉛は、バンドギャップ3.37eV、励起子束縛エネルギー60meVを持つ酸化物半導体として広く研究がなされている。また、格子欠陥から生成される電子によりn型伝導することが知られている。そのため、電流注入型紫外発光デバイスを実現するために安定したp型酸化亜鉛の作製が切望されている。本研究における目的は、p型酸化亜鉛を作製すること、及び紫外発光デバイスを実現することである。最初に、酸化亜鉛と格子整合する基板ScAlMgO_4を用いた高品質な酸化亜鉛薄膜に窒素、(ガリウム、窒素同時)のアクセプタードーピングをそれぞれ行ったが、p型伝導を観測することは出来なかった。この原因として考えられるのは、ノンドープ酸化亜鉛の品質が悪く、多くの欠陥等を含んでいるという点である。半導体としての価電子制御を行うには、格子欠陥の少ない良質な薄膜をベースとして作製することが求められる。そこで、陽電子消滅測定、発光寿命測定を行うことにより、ノンドープ酸化亜鉛薄膜中の格子欠陥、不純物等の評価を行った。現在最も高品質な光学特性を持つ単結晶バルクと比較すると、薄膜の発光寿命は非常に短かった。これは格子欠陥、または不純物が多い事によるものである。陽電子消滅測定では、単結晶に比べ亜鉛欠損を多く含んでいることが確認された。そこで品質向上を目指し化学量論組成を実現する作製条件の探索を行った。現在では格子整合基板上に酸化亜鉛の緩衝層を成長し、熱処理を行うことで表面を平坦にした後、薄膜試料を作製している。低温における発光スペクトル、反射スペクトルを評価すると、バルク単結晶に非常に良く似たスペクトル形状を示し、反射スペクトルにおいてこれまでの酸化亜鉛薄膜では観測されなかった励起子準位n=2構造が観測された。現在、この成果を論文投稿すべく執筆中である。
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