本年度は、2003年8月と2004年2月の2回、のべ6週間にわたりメキシコに滞在し、調査に従事した。調査地は、オトミー(族)移住者の住むメキシコシティと彼らの出身農村ケレタロ州サンティアゴ・メスキティトラン(SM)である。2月の調査では、これらの他に、オトミー居住地域であるものの、SMとは異なりオトミー語教材を用いた二言語教育の実施されているイダルゴ州イスミキルパンも訪れた。主に収集した一次資料は、(1)オトミーの教育データ、特に二言語教育に関するデータ、(2)高齢のインフォーマントへのインタビューなどオトミーの歴史に関する情報、である。 調査期間以外には、もっぱらオトミーを事例とする博士論文の執筆に取り組んだ。博論はメキシコ先住民の歴史と分析枠組を紹介したI章、農村コミュニティの変容を論じたII章、二言語教育も含む先住民の教育問題を論じたIII章、都市移住者の動向を論じたIV章、先行研究のない都市移住者への支援政策を評価したV章からなるが、本年度は特にI〜III章の執筆を進めた。その一部は、2003年6月8日に開催された日本ラテンアメリカ学会第24回定期大会および9月27日に開催されたInternational Federation for Latin American and Caribbean Studiesの第11回大会で報告した。2004年3月27日には、21世紀ラテンアメリカ研究会で「メキシコ先住民と二言語教育」という題目の報告を行う。2002年4月より参加しているアジア経済研究所の「メキシコとブラジルの教育」に関する研究会では、最終報告を2004年3月に提出した。本報告を改正した論文を『アジア経済』に投稿する予定である。英語の学術論文については、本年度は投稿を見送っている。最後に、朝倉書店から近く出版される『新世界地理第14巻ラテンアメリカ』に論文「現代メキシコの貧困」を執筆した。
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