本研究は、乳児が映像つまり2次元の情報媒体で示された情報をどのように認知しているのか、そして映像を外界の事物とどのようにして関係付け表象しているのかを明らかにすることを目指すものである。本年度は、乳児が映像世界(テレビの世界)と現実世界を区別して認識しているのかどうかを検討した。なお、この点については平成14年度にも10ヶ月児を対象として検討を行ない、10ヶ月児は実物と映像を区別して認知しているであろうという結論を得ているが、本年度は6ヶ月児を対象として同様の実験を行なうことで、その発達の過程を検討した。 6ヶ月児に、テレビ画面の片端からおもちゃの車を転がし反対側の端から消えるという事象を提示し、車が消えた側のテレビの脇に設けられたスクリーンの裏に実物のおもちゃの車があると乳児が予想しているかどうかを、注視時間を指標にした期待背反法を用いて調べた。その結果、6ヶ月児が、テレビの中の出来事は今実際そこで起こっているのではないことを理解していることを示す証拠は得られなかった。平成14年度の結果とあわせて考えると、映像世界と現実世界との区別は、6ヶ月から10ヶ月の間に可能になっていくことが示唆された。
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