今年度は結び目の外部に埋め込まれた曲面についての研究を行った。特に3次元球面内の結び目が張る種数が1のザイフェルト曲面について研究した。 3次元球面内の自明な結び目はファイバー結び目であるという事実からその外部に円周上の円板束の構造を自然に誘導する。この構造の全ての円板と横断的に交わる位置に置かれた結び目はブレイド表示されていると定義されている。全ての結び目はブレイド表示できることが知られているので、結び目の研究をするときにブレイド表示されたものだけを扱ってもよいことがわかる。ブレイド表示された結び目に張ったザイフェルト曲面と円周上の円板束の構造との連続的な交わりは、ザイフェルト曲面上にブレイド葉層と呼ばれる特異点を持つ葉層を誘導する。ブレイド葉層についての詳細な情報が得られればその結び目とザイフェルト曲面の位置についての全ての情報を得ることができる。 自明な結び目が張るザイフェルト円板上のブレイド葉層についてはバーマン氏とメナスコ氏とにより研究されていて、本質的に1種類だけであることが示されていた。この結果は自明な結び目が1つだけであるという事実と対応している。そこで彼等の結果を拡張するため種数が1の結び目が張る種数が1のザイフェルト曲面上に誘導されるブレイド葉層について研究した。その結果このブレイド葉層は本質的に10種類に分類できるという結果を得た。今後は、得られた10種類のブレイド葉層はそれぞれどのような特徴を持つ結び目の集合と対応しているのかを研究していきたいと考えている。
|