研究概要 |
本年度は,総合的水循環モデル開発の準備作業として,(1)試験流域の選定,(2)試験流域の視察,(3)水文データの収集,(4)サブモデルの開発,を行った.なお,平成14年7月3日から平成15年2月17日まで西オーストラリア大学のSivapalan教授の研究室に滞在し,Corrigin流域の水文データ収集および水循環モデルのサブモデル構築を行った. 試験流域は千葉県の海老川流域およびオーストラリアのCorrigin地域を選択した.海老川流域は湿潤気候下にある水田域を含む都市河川であり,オーストラリアのCorrigin地域は温暖気候と乾燥気候の中間的気候下にある自然流域である.この2流域において視察を行い,現在取得可能な水文データの収集を行った.今後,この2流域のモデル適用を行い,適用範囲の広いモデルの構築を目指す. データ収集に加えて,水循環モデルの基礎となるサブモデルの構築を行った.当初は,分布型水循環モデルの構築を行った(Yokoo, Kazama and Sawamoto, 2003)が,モデル構造やパラメータの決定が非常に煩雑なため,準分布型モデルを利用することとした.本モデルはReggian et al(2000)が提案したモデルであり,モデル構造やパラメータの決定が比較的簡単である.このため,今後開発を予定している農地モデルなどのサブモデルの追加も容易である.現在,構築した水循環モデルを用いて,その妥当性および適用性の評価を進めている.具体的には,温暖および乾燥気候下におけるモデルの適用性を,気候の季節性を考慮しながら進めた(Yokoo and Sivapalan, 2003).その結果,本モデルは温暖および乾燥気候下にある河川流域の水循環の概略を再現できることが明らかとなった.今後は,気候の年々変動が流域水循環に与える影響の評価および農地モデルの作成に着手する.
|