本年度は昨年度に引き続き、オーストラリアの水文データの収集および水循環モデルの開発を行なった。データの収集作業およびモデル開発は、平成15年3月から6月および15年7月から12月までの合計2回に渡って西オーストラリア大学の水研究センターのSivapalan教授の研究室に滞在して行なった。 水文データはオーストラリア全土から広く収集し、さまざまな時空間変動を含む貴重なデータを整理することができた。特に数年周期の気候変動の影響を受けているNew South Wales州Newcastleのデータを得ることができたため、開発中のモデルによる長期的気候変動の影響に関する検証作業を行なう上でも非常に貴重なデータを得ることができた。 開発中のモデルの動作確認を兼ねてモデルパラメータの感度解析および仮想実験を行い、日単位から数年単位の水循環変動の背後に潜む物理現象の説明を試みた。主な知見は以下の通りである。 ・年間水収支から計算する流出率および月流量変動は、降水と蒸発散の季節変動が逆位相であり、透水係数が大きく、勾配が緩い流域において最大となる。 ・湿潤気候では土壌水分量および地下水位ともに月変動が年々変動よりも卓越しているが、乾燥気候下であり降水と蒸発散が逆位相の場合は地下水位の年々変動が月変動に比べて卓越する。 ・日流量は、湿潤な気候下でシルトが多く分布する急勾配な流域の方が一年を通して平滑化される。 上記の結果は、学術雑誌への投稿を予定している。
|