先行する研究において私は、男性雇用者の地位達成過程とジェンダーに関する統計的な実証分析を、全国規模の調査データを用いて行い、仕事上の事柄決定力や役職昇進機会の決定メカニズムに関し、女性が存在することによって男性が利益を得るような関係性(「仕事の場におけるジェンダー」)が何らかの形で成立していることを明らかにした。これを受け本研究では、(1)「仕事の場におけるジェンダー」を維持構築すると孝えられる制度について詳しい検討を行う、(2)ジェンダー中立的に機能する、より公平な制度に改革してゆく際の方向性について示唆を得る、という2点を目的とする。 本年度は、研究のための基礎的作業として、「仕事の場におけるジェンダー」が強化された時期や強化される年齢層を明らかにし、このような男女間の関係性を維持構築する制度についての手がかりを得るため、「仕事の場におけるジェンダー」の時代的変化を、統計的手法を用いて検討した。まず、「仕事の場におけるジェンダー」の時代的変化を、1975、1985、1995各年のSSM調査の職歴データを併せて用いて、年齢層やコーホートをコントロールしつつ、役職昇進をイベント発生とするイベント・ヒストリー分析を行った。その結果、高度経済成長期以降、男性の役職獲得機械が増大していることが明らかになった。また、Blackburnによる性別職務分離概念にもとづき、日本の性別職務分離度を算出した。その結果、垂直的性別職務分離度が、女性の労働市場参入の増大に伴って高まっていることが明らかになった。 研究経費の主な使用内容は、統計処理のためのパソコンおよび統計ソフト、図書購入費、研究成果公開のための諸経費(学会旅費)などであった。
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