先行する研究において私は、男性雇用者の地位達成過程とジェンダーに関する統計的な実証分析を、全国規模の調査データを用いて行い、仕事上の事柄決定力や役職昇進機会の決定メカニズムに関し、女性が存在することによって男性が利益を得るような関係性(「仕事の場におけるジェンダー」)が何らかのかたちで成立していることを明らかにした。これを受け本研究では、(1)「仕事場におけるジェンダー」を維持構築すると考えられる制度について詳しい検討を行う。(2)ジェンダー中立的に機能する、より公平な制度に改革してゆく際の方向性について示唆を得る、という2点を目的とする。 本年度は、昨年度に引き続き、「仕事の場におけるジェンダー」を統計的手法を用いて分析した。昨年、「賃金センサス」データを用いて、日本の性別職域分離度を算出したが、これは国際比較可能な形の計算結果ではなかった。そこで今年は、計算式を改良したモデルを使い、国際比較可能なより普遍的なかたちでの性別職域分離度の算出を試みた。その結果、2000年頃の先進諸国のなかで、日本の垂直的性別職域分離度が高いことが明らかになった。現在この論文を執筆中である。 また、地位達成を受給年金額からとらえ、現行制度がもたらすジェンダー・バイアスについて明らかにするため、「全国消費実態調査」データを用いた年金受給額の分析を行った。 研究経費の主な使用内容は、学会旅費(国際学会含む)、図書購入費、統計処理のためのコンピュータソフト等である。
|