本年は、まず食事を中心とした分析を進めた。弘前藩津軽家と彦根藩井伊家を事例として、国元から江戸への食材調達や、振る舞いの様相を検討した。 今年度に発表した研究としては、論文4本、書評2本、共著1冊があり、多くの成果をあげることができた。 1本目の論文は、将軍吉宗が行った諸家什物の上覧に関するものである。吉宗は全国の諸大名・旗本および寺社が所蔵する、伝来の什物に関心を持ち、上覧後に写を作成した。それらは所蔵者側にとっても後代の名誉となった。 2本目の論文も什物に関するもので、武家の存続という点から什物意識を検討した。すなわち、家督相続に伴う什物相伝のあり方と、時としておとずれる改易や御家再興の際の対応を明らかにした。 3本目は、著名な遠山景元についてである。新たに遠山家の日記を見出し、その日記から景元死去前後の状況や、家族・交際関係を解明した。次年度も引き続き分析していくことを考えている。 4本目は、津軽家と那須家の間で行われた、養子縁組から家督相続に至るまでの経緯を明らかにしたものである。特に、どのような儀礼が遂行されたのかということに着目した。 また、共著図書の中に、2本の論文を執筆した。1つは「幕府儀礼の裏事情と井伊家の対応』、もう一つは「井伊家の特産品と献上儀礼」である。前者は幕府の年中行事・臨時行事から、不慮の事態が起きた時などの井伊家の行動を追ったもの。後者は、享保期を中心として、井伊家から幕府への献上物の変化と、藩財政倹約に伴う贈答縮小を分析したものである。
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