研究概要 |
気象官署における観測データや天気図上の梅雨前線帯の位置の統計的解析によって,1980年代から1990年代にかけては,盛夏期においても梅雨前線帯が日本付近に停滞しやすく日照時間が少なくなっていたことが明らかになった. 次に客観解析データを用いて,日本周辺での気圧偏差場の解析を行い,日本における盛夏期の天候と関係する偏差パターンとして,「亜熱帯ジェット上の定常ロスビー波列」と「オホーツク海高気圧の出現に関連する偏差パターン」の2つを検出した.このうち亜熱帯ジェット上の定常ロスビー波列は,これまで日本の南海上での対流活動に対応して現われるとされてきた北太平洋上のロスビー波列を含んでいるが,北太平洋上のみに存在するものではなく,むしろヨーロッパ付近から日本を経て北アメリカまで伝播する一連の定常ロスビー波列として認識できることが分かった.これら2つの偏差パターンの出現は,基本場から偏差場への順圧的運動エネルギー変換と関係していることも明らかになった.この結果は,必ずしも特定の強い励起源が存在しなくても,ある特定の形をした偏差パターンが生じやすいということを示している. 以上の結果を踏まえて,気候場を基本場として線形化した順圧モデルを作成し,線形定常応答問題を解いた.各々独立で北半球に一様に分布する渦度強制について応答パターンをそれぞれ計算し,その統計的性質を調べた.その結果,一様に渦度強制を与えても上記の2つの卓越した偏差パターンが現われやすいことが分かった.この結果は上述のエネルギー変換の評価の結果と整合的であり,特定の強い励起源が存在しなくてもある特定の形をした偏差パターンが生じやすいという考察を支持している.
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