研究概要 |
離散可積分系、量子可積分系や量子群の表現論への応用を目指して、線形差分方程式を満たす特殊函数を中心に研究を行った。今年度の研究成果としては、超幾何函数の2変数拡張である(r,s)-超幾何級数の隣接関係式が2変数量子展開環の表現として捉えられるという結果が、国際会議"International Conference of Special Functions and Their Applications"の報告集に正式に受理されたこと、また、2003年12月に立教大学で行われた研究集会「弦理論と重力理論の数学的構造解明に関する学際的研究」において楕円特殊函数と楕円ガンマ函数の研究の現状について発表し、その報告集のための論文も準備中であることが挙げられる。また、現在、次のような研究が進行中である。 (1)q-超幾何函数の隣接関係式を用いて戸田分子方程式と呼ばれる離散可積分系のτ函数のカソラチ行列式解の構成を行った。論文は現在投稿中である。 (2)多重ガンマ函数の漸近展開の公式(スターリングの公式の一般化)を用いて、ガンマ函数のガウス積表示、オイラー積表示の一般化にあたる多重ガンマ函数の無限積表示を得た。この表示からの応用として、多重ガンマ函数の倍数公式を証明することを現在遂行中である。この研究に関する結果を2004年3月に筑波大学で行われる日本数学会年会において発表する予定である。また、この問題に関する論文を準備中である。
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