本年度の研究実績は以下の通りである。 1.子どもの身体をめぐる教育的介入の歴史をジェンダーの視点から読み解くという課題に答えるため、以下の3点にわたる作業をおこなった。 (1)戦前期女子中等教育機関における身体教育の実態にかかわる資料の収集、(2)昭和恐慌期の東北地方子女身売問題にかかわる地方新聞記事の収集、(3)江戸期〜昭和30年代にかけての日本の買売春制度・廃娼運動・女子教育政策の3者についての詳細な年表作成 以上については、作業が膨大であったため、本年度中に成果発表に至ることはできなかったが、次年度にはこれらのデータを活用した論文を発表すべく、現在準備中である。 2.東京都内公立中学校における運動部活動の観察記録データをもとに、スポーツにおけるジェンダー秩序の再生産メカニズムに関する論文を執筆した。 子どもの教育にかかわる領域のうち、スポーツのように身体にかかわる領域は、他のアカデミックな領域と異なり、ジェンダーによる分離が自明とされる唯一の領域である。論文では、中学校の運動部活動(具体的には柔道部)における男女部員の処遇と配置に着目し、それらのミクロな実践が、社会におけるスポーツのあり方というマクロな構造のもとに規定されている様相を描き、スポーツの実践を通じて社会のジェンダー秩序が再生産されるメカニズムを問題化した。 なお、本論文は現在学術雑誌に投稿準備中である。
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