B中間子のモンテカルロ(MC)シミュレーションデータを大量に発生させ、そのデータを用いてB中間子の崩壊点の位置分解能を表現する関数を作成した。この関数と、比較的分岐比の大きい崩壊モードの測定データを用いてB中間子の寿命の測定を行うことで、この関数の正当性を評価し、同時に関数に用いられるパラメーターの値を決定した。また、B中間子のフレーバーを特定できる崩壊過程の観測をこの関数を用いて行い、本研究で用いるフレーバー同定方法の性能を評価し、フレーバーの同定精度のパラメーターを決定した。 これらの位置分解能関数やフレーバー同定方法と、2002年7月までにBelle検出器によって記録されたB中間子のCP個有状態への崩壊モードのデータを用い、B中間子の時間発展の解析を行い、CP非保存のパラメーター、sin2φ_1の値を測定したその結果、sin2φ_1=0.719±0.074±0.035と言う値を得た。ただし、一つ目の誤差は統計誤差を、二つ目の誤差は系統誤差を示す。この結果は他の実験結果と矛盾なく、また、理論とその他の測定結果を用いた間接的な予測値とも精度良く一致し、素粒子の標準理論と矛盾しないものであった。 この結果は2002年7月にアムステルダムで開催された国際会議31^<st> International Conference on High Energy Physics (ICHEP02)において発表された。また、この結果を論文にまとめ、Physical Review D誌に投稿し、掲載された。
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