今年度の本研究の進展状況としてはまず、今まで行ってきた重イオンの加熱・加速メカニズムの理論をさらに洗練化し、このメカニズムが起きるための波動に課せられる必要条件を定量的に導き出した。この初期結果はAdvances in Space Researchに投稿中であり、詳細な結果はPhysics of Plasmaに投稿準備中である。 次に、重イオンの効果による加熱・加速が最も問題となっているプラズマ環境を再検討した。その結果、オーロラ領域における電子やイオンの加速は未だ多くの謎を残しており、そこでは重イオンが選択的に加熱・加速され大きなエネルギーを得ていることが観測的に分かっている。さらにこの領域では、静電ポテンシャルのギャップが存在することがあり、このギャップを用いて電子やイオンが加速されることが知られているが、従来の重イオンを考慮していない研究ではポテンシャルギャップ生成メカニズムは解明されていない。また、ポテンシャルドロップを再現するためには、境界を開放端にしなければならないことが知られている。加熱・加速を正しく記述する粒子シミュレーションの場合、開放端の取り扱いが非常に難しく、今なお、懸案事項である。そこで、オーロラ領域での電子・イオンの加速に、重イオンの効果、開放端の効果の両方が利いていると仮説をたてた。 その仮説を検証するため、シミュレーションコードの開発を始めた。境界条件に関しては、数値的な効果を最小限にするよう特に注意を払った。現在、初期結果がでつつあり、近日中に投稿できる予定である。
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