イヌジステンパーウイルス(CDV)の膜タンパクの一つであるMタンパクの機能解析を行うことを、目的として以下の実験を行った。 1)CDVのMタンパクをほ乳類細胞に一過性、あるいは持続的に発現させたときのMタンパクの局在や、宿主細胞タンパクとの相互作用、宿主遺伝子発現への影響を検索するために、Mタンパクを発現ベクターに組み込み、ほ乳類細胞での発現を試みた。具体的には一過性大量発現のためにpCAGGSベクターを用い、Mタンパクのみを発現させることで、宿主細胞(293細胞)でのRNA合成が阻害されるかどうかを検索した結果、MタンパクのみをpCAGGSベクターを用いて導入するだけでは、細胞での発現効率の低さもあり、十分な検討ができなかった。そのため、Cre/loxPシステムにより発現をコントロールできるよう、neo耐性遺伝子をもつpCALNLベクターにM遺伝子を組み込み、293細胞へ導入し、薬剤耐性細胞を選出したが、効率的なスイッチング発現を行う細胞群をえることができなかった。これを解決するために、invitirogenのgeneswitchシステムを用いてMタンパクをスイッチング発現する細胞株を作製した。さらにこれを用いてMタンパクと相互作用する宿主側因子の探索などを行っていく。 2)1)で作製したMタンパクスイッチング発現293細胞を用いて、リバースジェネティクスによりMタンパク欠損CDVの作出を試みている。具体的にはMタンパクを欠損した組換えCDVは増殖やCPE形成能が劣ることが予想されるため、リバースジェネティクスによりウイルスのレスキューが成功していることを示すマーカーとして、EGFPを用いている。 EGFPの観察により、ウイルスの増殖様式(培養上清に放出されるのか、細胞間を直接伝播するのか)などの観察が肉眼的に行え、親ウイルスとの比較によりMタンパクの機能解析を行うと同時に、ウイルスワクチンやベクターとしての可能性を探って行く。
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