研究概要 |
微生物が有するエネルギー代謝の一つとして、近年嫌気鉄呼吸が発見された。電子受容体として3価鉄を利用する鉄呼吸は硫黄呼吸と並び、進化的に非常に早くに獲得された機能であることが考えられている。しかしながら現在報告されている鉄還元微生物において、酸性・高温環境下という原始環境下で生育するものは発見されていない。これまでに、新規好酸性・超高熱性古細菌NA-1株の分離に成功している。 嫌気鉄呼吸により培養したNA-1から嫌気鉄呼吸における電子伝達系末端酵素を精製した。精製には3価鉄還元活性を指標とした。鉄還元酵素は細胞膜画分から精製され、分子量64,200Daのモノマーであり、スペクトル解析及びヘム解析からチトクロムであることが示唆された。さらに、活性中心を担うコファクターであるヘムを抽出・精製し、ピリジンフェロヘモクロムを作製した結果、新規ヘムである可能性が示唆された。現在、確認のためにMS分析及びNMR分析を行っている。また、N末端アミノ酸配列を解析した結果、Sulfolobus acidocaldarius由来のチトクロムb556/562のAサブユニットと60%の相同性を有していたが、各性質の差異から構造は似ていても機能は全く異なっていた。 精製した鉄還元酵素のN末端アミノ酸配列からプライマーを作成して鉄還元酵素遺伝子のクローニングを行った。結果、約1,500b.p.のORFが得られ、その遺伝子配列中に鉄還元酵素内部アミノ酸配列を有する事から鉄還元酵素遺伝子である事が示された。しかしながら、遺伝子からの推定分子量は約50,000Daであり、生化学分析の結果と異なる。N末端側にAspが多く存在している事、酵素量末端が疎水性アミノ酸で構築されている事から考えると、糖鎖付加の可能性が考えられた。
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