研究概要 |
申請者は,研究計画に従い以下のような調査・研究を行った。 1.様々な文法枠組の文法をコーパスから自動獲得する研究の調査 2.LTAG文法枠組の文法学習の検討 3.LTAG文法からHPSGスタイルの文法への文法変換における変換前後の文法の等価性の証明 まず1および2について述べる.コーパスからの文法の自動獲得の研究は,ここ10年ほど盛んに行われてきており,それらの研究では,基本的に単純なヒューリスティックあるいは統計手法により文法を自動獲得していることが分った.さらに,近年のLTAG文法学習で得られた文法を言語学的に体系化する研究を調査した結果,既存の文法学習手法では,言語学的に妥当ではない構文構造が予想以上に多く学習されることが分ったため,本研究では現在、既存の大規模LTAG文法を文法の自動学習の際に考慮し,これに既存の文法学習手法を組み合わせることで,既存の文法に対する拡張,あるいは既存の文法にある程度バイアスをかけた文法学習を行うことを考え,具体的な学習手法の検討を行っている. 次に3に関して述べる.本研究では,i)LTAGの枠組で文法学習を行い,ii)学習されたLTAG文法を等価(変換の前後で構文構造およびそれらの組み合わせにより構成される構文木を正しく保存する)なHPSGスタイルの文法に変換し,iii)HPSGの枠組で意味的制約を学習するという多段階の文法学習を行う.このうち,ii)における変換前後の文法の等価性は,これまで特定の文法と特定の文に対する実験上の検証にとどまっており,形式的な証明が欠けていたが,今回形式的な証明を行ったことで,自動獲得された文法に対しても適用可能となった. 購入したノート型コンピュータは,2におけるLTAG文法学習手法の試験的な実装に用いた.
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