我々は、電子相関や不規則性が引き起こす量子相転移、そのなかでも量子系特有の自由度である位相の自由度が重要になるようなケースをターゲットとしている。 本年度は、特に、異方的超伝導体やカーボンナノチューブなどの系に現れる系の端に現れる状態(エッジ状態)に着目した研究を行った。エッジ状態は、異方的超伝導体(特に2次元のd波超伝導体)におけるトンネル効果のゼロバイアスコンダクタンスピーク等を引き起こし、クーパーペアの対称性を実験的に決定する手がかりになりうる。また、グラファイトリボンやカーボンナノチューブにおいては、ゼロエネルギーのエッジ状態に起因する磁性の発現の可能性が指摘されている。我々は、これらの系に存在するゼロエネルギーのエッジ状態が、系のトポロジカルな性質の顕れとして理解できることを示した。我々の議論に従えば、どのような系がエッジ状態を持つのかをトポロジカルな観点から、簡便に判定することができる。 また、系の不規則性に起因する量子相転移(アンダーソン転移)に関して、量子Hall効果のプラトー間の転移、d波の超伝導体、ランダムXY模型等に関連がある、ランダムネスを感じているディラックフェルミオンの系の研究を行った。我々は、この系にはクリーンな系にはない種々の事情があり、臨界点での波動関数の統計的な性質を非摂動的に計算できること、フリージング現象と呼ばれるスピングラス的な転移が起こること、などのランダム系に特有な臨界現象を示すことを明らかにした。
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