研究概要 |
本年度は人工遺伝子振動子、スイッチ、センサーの設計理論の確立と、それら基本モジュールの実験実装の提案を中心に研究を行った。 まず厳密な数理解析に基づく安全で信頼性の高いスイッチモジュールの設計方法を提案し、またこの設計法と実際の生物実験データを用いて、実験実装可能な3状態をもつスイッチのデザインを提案した。この結果は国際会議IEEE CSB2002で発表され、論文はJournal of Theoretical Biologyに採用されている。 また、コンピュータによるシミュレーションを用いた数理解析をもとに様々な変異を加えた振動子モジュールのデザインを網羅的に探索し、実装した際に最も安定に動作すると考えられる振動子のデザインを見つけ出しそれを提案した。一方、このように安定に動作する振動子モジュールのデザインにいくつかの変更を加えることにより、パルス的な応答をする人工遺伝子センサーモジュールが得られることを発見した。このモジュールを数理的に解析することにより、入力に弱いノイズがのっている場合、ノイズに影響されず信号がモジュールに入ってきたことを特定でき、さらに入力にのっているノイズを利用して非常に弱い信号も特定する事ができるということを示した。これらの結果はBioComp2002,ICSB2002,などの国際会議で発表しており、論文を現在投稿準備中である。 さらに、生体内におけるこれらの基本モジュールの振る舞いをより正確に評価・予測するため、ノイズの影響を正しく評価したより複雑な数値実験を行う準備研究も行い、ノイズの影響でモジュールの振る舞いに様々な変化が出ることを突き止めている。これらの数値実験結果を数理的に解析するための手法も開発している。
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