研究概要 |
膵癌における中心体異常発生メカニズムについて分子生物学的に検討し、以下の点を明らかにした。 1.20種類の膵癌培養細胞株において、現在までに膵癌で報告されている遺伝子異常プロファイルを作成し、中心体異常との関連を単変量・多変量解析を用いて統計学的に解析した。しかしながら、特定の遺伝子異常と中心体異常のあいだに、明らかな相関を認めなかった(未発表データ)。 2.膵癌において過剰発現している遺伝子群と中心体異常との関連を探るため、膵癌と正常膵組織での遺伝子発現パターンを、cDNAマイクロアレイを用いて比較検討した(米国ジョンズ・ホプキンス大学との共同研究)。膵癌において特異的に過剰発現している約150個の遺伝子をみいだし、この中にはいくつかの中心体複製を制御する遺伝子(例えば中心体キナーゼAurora2/AIK1)も含まれていた(Am. J. Pathol.,in press)。 3.中心体異常の発生および形質維持には、細胞周期チェックポイントの破綻が関与している可能性がある。そこで、膵癌におけるチェックポイント異常を明らかにすべく、G2/M期チェックポイントをつかさどる重要なp53の下流遺伝子である14-3-3sigmaのDNAメチレーション異常を調べた。本遺伝子は、乳癌などでは高メチル化(hypermethylation)しているとの報告に反して、大多数の膵癌で低メチル化(hypomethylation)を示しており、膵癌組織における過剰発現と相関していた(Sato et al.,論文投稿中)。今後は他のG2/Mチェックポイント遺伝子(Gadd45a, chk2,reprimoなど)における遺伝子あるいはメチル化異常の有無と、中心体異常との関連を中心に解析する予定である。
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