研究概要 |
我々は"膵発癌および進展に伴う中心体異常発生メカニズム"について様々な角度から分子生物学的に検討し、以下の点を明らかにした。 1.cDNAマイクロアレイを用いた膵癌における包括的遺伝子発現プロファイリングの結果、Aurora Aキナーゼをはじめとする重要な中心体複製制御遺伝子の発現異常を見いだした(Am.J.Pathol.,2003),現在、いくつかの膵癌培養細胞において、これらの遺伝子をRNA干渉(RNAi)を用いて阻害し、中心体異常に与える影響を検討中である。 2.肺癌における中心体異常の発生および形質維持には、細胞周期チェックポイントの破綻(特に、DNAメチル化異常による遺伝子発現消失)が関与している可能性が高いと考えられる。現在までの検討で、G2/M期チェックポイントの中心遺伝子14-3-3sigmaは膵癌においてはむしろ過剰発現していることが明らかになり、中心体異常に関与する可能性は低いと考えられた。ごく最近、大腸癌、頭頸部癌、および胃癌において有糸分裂チェックポイント遺伝子CHFRのメチル化異常と、それに伴う遺伝子発現消失が報告され、発癌との関連が示唆されている。そこで今回、膵癌細胞におけるCHFRのメチル化異常の有無をメチレーション特異的PCRを用いて調べたところ、約10%の輝度でメチレーションの異常を認めた(Sato et al., 論文準備中)。今後はCHFRと中心体異常および遺伝子不安定性(genetic instability)との機能的関連を明らかにする予定である。 3.現在までの研究成果のまとめを執筆し、WILEY社から近日発刊予定の本"Centrosomes in Development and Disease"(Prof.Erich A.Nigg(Max-Planck Institute for Biochemistry, Germany)監修)に掲載予定である。
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