放線菌は線状ゲノムをもち、そのDNA5'末端にタンパクが結合している。この末端タンパクは線状ゲノムの維持や末端DNAの複製・修復に重要であると考えられている。そこで本研究では、放線菌の末端タンパクを同定及び解析し、線状ゲノムの維持や末端DNAの複製・修復機構などの理解を目指した。 放線菌において末端タンパクは単離・精製が非常に困難である。現在までにde novo protein sequencingによって解析された例は、唯一、最近になってStreptomyces rocheiのもつプラスミドpSLA2-Sのみである。S.coelicolor A3(2)のもつプラスミドSCP1は356kbあるが、その大きさ故大量回収が困難である。そこで、両末端にSCP1DNA末端断片をもつ7.9kbの線状プラスミドを人為的に作成した。このプラスミドはS.coelicolor A3(2)内で線状で存在するが、中央に位置する複製開始点が環状プラスミド由来だったため非常に不安定であり、細胞内で多コピーで存在しにくかったり、すぐに環状化してしまった。そのため、この人為的なプラスミドから末端タンパクを回収することはできなかった。そこでパルスフィールド電気泳動によってインタクトのSCP1を末端DNAと末端タンパクが結合したままの状態で大量に回収した。このDNA-protein complexからBenzonasesによってDNAを除き、SDS-PAGEによって末端タンパクと予想されるタンパクを回収し、TOF-Massで解析を試みたが、サンプル量の問題から同定には至らなかった。
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