カボチャのアスコルビン酸酸化酵素(AAO)遺伝子5'上流域に結合するタンパク質AOBPに、Dofドメインと呼ばれる植物特有なDNA結合ドメインを持つ。これまでに、いくつかのDofタンパク質は植物特有な生理機能に関与した転写因子であることが示唆されている。しかし、Dofタンパク質が植物遺伝子の発現調節機構にどのように関わっているかについてはほとんど分かっていない。そこでDofタンパク質AOBPの機能を明らかにするため、現在、実験系の確立したモデル植物であるタバコのAOBP(NtAOBP)を用いて解析を行っている。NtAOBPのターゲットであると考えられるタバコAAO遺伝子の5'上流、約1500bpのプロモーター領域を単離し、この領域をプローブとしてゲルシフトアッセイをおこなった結果、NtAOBPが実際にAAO遺伝子のプロモーター領域に結合し得ることが分かった。しかし、認識配列特異性が低く1500bpの様々な領域に結合可能であったことから、転写調節を特異的に制御するためには、AOBPと他のタンパク質との相互作用が重要ではないかと考え、酵母のTwo-hybridシステムを用い、AOBPと相互作用しているタンパク質の同定を試みた。スクリーニングの結果、転写調節に関わる興味深い因子、HSP90 familyのcDNAを得た。HSP90は細胞内のシグナル伝達経路に関わるタンパク質をターゲットにする分子シャペロンで、転写因子であるステロイドホルモンレセプターに結合して、標的タンパク質の細胞内局年性、DNAへの結合能および転写調節活性を制御しているという報告もある。これまでのところDofタンパク質とHSPが相互作用しているという報告は無く、現在、転写調節におけるAOBPとHSPの機能について、詳細な解析を試みている。
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