研究概要 |
1、今年度の本研究の軸となったのは、『金色夜叉』のもととなったとされる英書weaker Than a Womanの原典確認および翻訳作業である。作者Bertha M.Clayが19世紀末のイギリスを舞台に創りあげた作品であり、英米両国でベストセラーとなった背景から、訳出段階および訳注作業段階において必要となった情報は主としてイギリスの図書館で収集し、建造物などは舞台となった現地に赴いて取材した。なお、本翻訳は平成14年12月に邦題『女より弱き者』(南雲堂フェニックス出版)として出版し、平成15年1月に日本図書館協会選定図書に選ばれ、『読売』『毎日』ほか各新聞に書評が掲載された。 2、平成14年7月に開催されたSociety For The History of Authorship, Reading and Publishing(ロンドン大学)のシンポジウムにパネリストとして参加した。テーマは、"Serial Novels out of Anglo-America"であり、日本、フランス、アルゼンチンおよびアメリカの19世紀末の新聞小説とそこに関わる翻案、著作権の問題についてテーマが進められた。この件の詳細は翌月の『読売新聞』紙上に報告した。 3、来年度へ引き継ぐ研究課題であるダイム・ノヴェルズと明治期作品との影饗関係について『徳田秋聲全集』(八木書店)、『明治期翻訳文学全集』(ナダ出版センター)、Dime Novel Round-Up(Kwik Kopy Printing)No.668に、尾崎紅葉、黒岩涙香、徳田秋聲についての解説および、論文を掲載した。
|