まず、昨年度Chemical Engineering Scienceに投稿したFingeringの成長速度が化学反応を伴うViscous fingeringの特性に及ぼす影響に関する理論解析による論文は審査が長引いており現在もまだ審査中である。ヘレ・ショウセル内に形成される化学反応を伴うViscous fingeringの反応特性に及ぼすセルの間隔の影響について実験的に検討した。セルの間隔が大きくなると反応パターンに及ぼす反応物質の濃度の影響は相対的に小さくなることが明らかになった。これはセルの間隔が小さいときは、反応物質の濃度によって反応面と二液体の境界の相対的な位置関係が大きく異なるのに対し、セルの間隔が大きくなると反応物質の濃度によらず、反応面は二液体の境界に位置しているからであると考えられる。この妥当性を示すために1mm以下のセルの間隔方向の二液体の境界形状の分布と反応場の分布(反応物の濃度分布)を直接実験的に測定する実験系の構築を試みた。そこで従来もっぱら生物細胞の三次元構造の把握に用いられた共焦点レーザー走査蛍光顕微鏡を用いてセルの間隔方向の構造を計測する手法を立案した。そして実際に慶應義塾大学システムデザイン工学科谷下一夫教授の所有する共焦点レーザー走査蛍光顕微鏡をお借りしその計測の可能性を検討した。その結果、セル内に焦点が合うためのセルのガラス板の厚さの範囲に制限があることを明らかにした。また測定が可能となるレーザー蛍光物質の濃度条件などを検討した。また化学反応による化学種の濃度変化によって液体の粘性が変化する系での実験を行い、化学反応によって粘度が減少する場合、FingeringパターンからFractureパターンへの遷移が観察された。
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