デーン手術による3次元多様体のなす空間の研究結果に関し、主に以下の2項目についての報告を行う。 (1)双曲的結び目から非双曲的多様体を得るデーン手術について:双曲的結び目から得られる多様体の、双曲的多様体との異なり方を表す幾何的な性質として、本質的トーラスの枚数が挙げられる。種数1の結び目に沿い0-手術を施すことにより、本質的トーラスまたは非分離球面を含むホモロジーハンドルが得られる。従って、種数1の双曲的結び目が張るザイフェルト曲面の性質を調べることが研究の手がかりになり得ると考えられるが、非ハーケン多様体内の双曲的結び目が同時に張る種数1のザイフェルト曲面は高々7枚であることが示され、これは双曲的結び目から得られる本質的トーラスの枚数の上限の存在に関する予想を支持する結果と考えられる。この研究結果に関して国内研究集会、国際会議(日韓合同)に於いて発表を行い、学術雑誌に掲載を予定している。 (2)多項式不変量の振舞いについて:同じ多様体を得る結び目を区別する方法として、多項式不変量の違い、双曲体積の違い、本質的曲面の枚数の違い等が挙げられる。実際、0-手術で同じ多様体を生成する無限個の双曲的結び目がオソイナックにより発見され、双曲体積の漸近に基づいた証明が与えられている。一般に0-手術で同じ多様体を得る結び目のコンウェイ多項式は一致し、得られる多様体がホモロジーレンズ空間、とりわけホモロジー球面の場合は絡み数と親和性の高い多項式不変量の低次の係数、ゲーリッツ行列の同値類等がキャッソン不変量、ホワイトヘッドトージョンの影響を受けることが知られている。ここでコンウェイ多項式の高次の係数の振舞いを調べ、同じホモロジー球面を得る結び目の多項式不変量を操作する効果的な方法が得られ、いくつかの研究の見通しが得られた。これらの研究結果は現在、学術雑誌投稿論文の準備中であり今年度学会発表等を予定している。
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