金属イオンを内部に集積できるフェニルアゾメチンデンドロンと、分子変換触媒として良く知られているポルフィリン錯体を組み合わせた新規高分子錯体の合成に成功した。この分子は光散乱、粘度測定により直径約5nmの球状構造を有していることが分かっており、従来型分子と比べて剛直な構造をしていることから基板上に並べる事が可能である。また、デンドリマーの一般的な特徴であるコアの包摂効果も紫外可視吸収スペクトル、電気化学測定から示された。 本デンドリマーの金属イオン集積能はUV-visスペクトルを用いたSnCl_2の滴下実験により詳細に調べた。その結果スペクトル変化の等吸収点移動と各世代の配位サイト数との関係から、コアに近い部分にまず優先的に金属が配位して、段階的に外側へ向かってイオンが埋まっていく特徴的な配位挙動が明らかとなった。 デンドリマーの内部に精密に配置された金属イオンは電子担体として働くことができ、亜鉛ポルフィリンをコアに持つ分子の消光実験からデンドロン部位とコアとの間で高速な電子移動が生起していることが示唆された。また多電子移動が必要な二酸化炭素還元を、コバルトポルフィリンがコアであるデンドリマー錯体で触媒すると、非常に高電位において反応が進行することを突き止めた。この触媒還元にはコアとデンドロン間の電子移動が重要であることが分かっている。現在、電子の集積効果に注目して触媒機構の解明と性能の向上について検討中である。
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