研究概要 |
磁気記録の高密度化による信号磁場の低下のため,感度の高い素子が必要とされている.超高感度磁気ヘッドとして,大きな磁気抵抗比を有するスピントンネル接合が注目されているが,高周波磁気インピーダンス特性は,明らかになっていない.そこで,本研究では,スピントンネル接合における高周波磁気インピーダンス特性を調べた.イオンビームスパッタ装置により,Co/AI-oxide/Coスピントンネル接合を作製した.AI-oxide層は,スパッタAI膜を純酸素雰囲気中,室温で12-24時間酸化させることにより作製した.AI-oxide層の膜厚測定には,X線光電子分光法(XPS)及び透過型電子顕微鏡(TEM)を用い,AI-oxide層のバリアは電流-電圧特性をSimmonsの式にフィッティングして求めた.高周波インピーダンス特性の測定には,4端子法を用いた.その結果,スピントンネル接合において,外部磁場によりインピーダンスの実部だけでなく,虚部も変化することが初めて明らかになった.トンネル磁気インピーダンス比は,バリアが高くになるに従い,大きくなる.さらに,外部磁場により実効的なキャパシタンスも変化することがわかった.また,スピントンネル接合のRC並列等価回路とdc TMR効果からトンネル磁気インピーダンス効果の周波数依存性を計算した結果,トンネル磁気インピーダンス比の実部は,低周波領域においてdc TMR比を示し,高周波領域において,dc TMR比の負の値を示す.また,トンネル磁気インピーダンス比の虚部は,低周波領域においてdc TMR比の2倍を示し,高周波領域において,ゼロに漸近することを明らかにした.トンネル磁気インピーダンス効果の虚部検出を磁気ヘッドに応用する際,接合の面積抵抗を低減し,Roll-off周波数を高くする必要があることがわかった.
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