研究概要 |
次世代の超高感度再生用磁気ヘッドとして,スピントンネル磁気抵抗効果を用いた磁気ヘッドの研究が進められている.しかし,スピントンネル素子には絶縁層が存在し,大きな電流を流すことができないため,従来の磁気センシング方法では,大きな出力が得られないという問題が生じている.そこで,本研究では,スピントンネル素子をハートレー発振回路内に挿入し,磁場変化を発振の有無で検出する新しい高感度磁気センシング方法を提案し,従来の数十倍の高出力で信号を検出することを目的とした.初めに,スピントンネル素子の等価回路であるRC並列回路を磁気抵抗素子とコンデンサで構成し,磁気センシング回路の動作確認を行った.その結果,磁場変化を発振の有無に対応させることに成功し,1.1V_<pp>の高出力発振電圧を得た.これは従来の数十倍の高出力結果を示す.発振周波数は223kHzであり,ハートレー発振周波数の理論値と一致した.また,エラーレートを測定した結果,10^<-5>以下のエラーレートを維持するには,抵抗変化分が30Ω以上必要であることがわかった。次に,Co/Al-oxide/Coスピントンネル素子を用いた磁気センシング回路において,発振電圧とスピントンネル素子に流れる電流密度を調べた.その結果,スピントンネル素子に流れる電流密度が4.8×10^3A/m^2の小電流密度でも,45mVの高出力発振電圧を得ることがでた.これは従来の数十倍の高出力結果を示す.最後に,回路シミュレーションにより,スピントンネル素子の高感度再生用磁気ヘッドへの応用可能性について調べた.その結果,6.2-8.2V_<pp>の高出力発振電圧,7.2-17.2GHzの発振周波数,0.07-0.36nsの立ち上がり及び立ち下がり時間が可能であることがわかった.以上の結果から,本研究で提案した新しい磁気センシング方法は,次世代の高感度再生用磁気ベッドとして大きな可能性があると考えられる.
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