研究概要 |
本研究では、磁性不純物を含んだ低次元電子系での、電子輸送に関する理論的な研究を行いました。研究手段としては、転送行列法を用い、これをスピン自由度を含んだ系に拡張しました。これにより、系のスピンに依存したコンダクタンスを計算することが可能になりました。系が不純物を含む場合、コンダクタンスは、揺らぎを示すことが知られています。この揺らぎは、系の対称性だけに依存した普遍的な値をとるため、Universal Conductance Fluctuation(UCF)と呼ばれています。本研究では、このUCFの値が系の対称性の他に、磁性不純物の種類にも依存することを明らかにしました。私たちは磁性不純物として、スピンの向きを1,2,3次元方向に限定したモデルを用いました。計算の結果、磁性不純物のスピンの向きを増やすことで、UCFの値は半分に減少していくことがわかりました。これにより、UCFの値がスピン縮退にも依存していることを明らかにしました。また、系に繋がれている端子の状態の変化によっても、UCFが変化することを示しました。これは、端子にある電子の状態がゼーマン分裂をしている場合の、電子輸送特性を調べたものです。この研究では、コンダクタンスの他に、系の透過固有値の準位統計を調べました。これにより、端子にのみ磁場が印加されている場合でも、系の透過係数分布に変化が見られることを明らかにしました。今後は、磁性不純物が時間的に変化する場合の、電子輸送特性を調べます。
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