野辺山ミリ波干渉計を用いた原始惑星系円盤のサーベイ観測の成果を、米国の「The Astrophysical Journal」誌に報告した。研究成果の最重要ポイントは、低質量YSOであるTタウリ型星を取り巻くダスト円盤(原始惑星系円盤;固体微粒子からなる惑星系形成母体となる円盤状構造)の進化および多様性を観測的に明らかにした点である。13天体を観測した結果、中心星のHα輝線の弱化(質量降着率の減少)につれて、ダスト円盤半径が膨張する傾向を捉えることに成功した。この結果は、低質重星周囲の円盤内での粘性理論モデルに強い制約を与えることが出来る。また同時に、円盤面密度の半径依存性がこれまでに考えられてきた以上にフラットであること、ダスト粒子のサイズはミクロンサイズであること、質量降着率の減少に伴う円盤の温度低下などが明らかになった。 一方、将来の大型ミリ波サブミリ波干渉計の受信機システムを構築するために、カートリッジ型の冷却システムを設計・評価した。その結果は日本天文学会欧文論文誌「Publication of the Astronomical Society of Japan」に報告済みである。カートリッジ型の受信機システムを開発することで、数10台のアンテナ、数100個の受信機を搭載するような大型干渉計でも、各々の受信機グループが独立して開発を進めることが可能になる。ネジを使わない、かつ高い熱伝導度を持つ熱リンクシステムを導入することで、低機械振動(〜2ミクロン)、低温度振幅(〜2mK)を達成した。開発した冷却システムには、既に試験サブミリ波受信機が搭載されており、2002年度10月〜11月にかけて南米チリ(標高4800m)のサブミリ波観測に適したサイトで、試験観測および評価を終えており、2003年度夏季(チリの冬季)に科学観測を開始する予定である。
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