研究概要 |
野辺山ミリ波干渉計を用いた原始星L1551 NEのCS分子輝線観測の成果を、米国の「The Astrophysical Journal」誌に報告した。研究のポイントは以下である:従来は低質量星形成領域では孤立した系で形成が進むと考えられてきたのに対して、おうし座分子雲でも近傍の原始星が他の原始星形成に大きな影響を与えうる、具体的には原始星アウトフローが近接星の形成を誘発している現場を観測的に示した。低質量星形成のシナリオは、これまでほとんどが孤立系で進行すると考えられてきたが、その考えに一石を投じる結果である。更に原始星L1551 IRS5,HLTauのエンベロープ内で原始惑星系円盤が形成されつつある様子を観測的に明らかにし、現在論文を投稿中(一部執筆中)である。 また、大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)のための受信機システムを構築するために、カートリッジ型の冷却システムを設計・評価して、その結果を「Publication of the Astronomical Society of Japan」と「Cryogenics」誌に報告した。カートリッジ型の受信機システムは、ALMAが想定する80台のアンテナ、各7バンドの受信機を搭載する大型システムでも、各々の受信機開発グループが独立して開発を進めることが可能になる点が重要である。ネジを使わない、かつ高い熱伝導度を持った熱リンクシステムを導入することで、低機械振動(振動の振幅が〜2ミクロン)、低温度振動(〜2mK)を達成した。開発した冷却システムは既にサブミリ波受信機を搭載し、南米のチリの標高4800mのサイトで345GHz,500GHz,800GHz帯において既に科学観測をはじめている。
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