オートファジーは、外的環境変化による細胞内応答メカニズムの1つで、飢餓環境下において細胞質構成成分を非選択的に分解する機構として知られている。細胞はオートファジーによる分解産物を再利用することで生存維持に必須の蛋白をつくりだす。一方細胞は飢餓に応答して細胞分裂を停止し、それに伴い分泌経路による細胞表面への膜の伸張は停止する。本研究では、飢餓条件下においてオートファゴソーム膜形成を含む細胞内の膜動態が如何なる変化をするか酵母を用いて遺伝学的な手法を駆使することにより明らかにすることを目的とし行った。 オートファジーが誘導されると、細胞質中にオートファゴソームと呼ばれる二重膜の構造体が細胞質を取り囲みながら形成される。この新規に形成されるオルガネラの膜の起源は未だ解明されておらず、ER、ゴルジ体、液胞と多くの仮説が乱立している状況である。そこでまず、分泌経路とオートファジーの関係を明らかにするために、分泌経路の初期過程の変異株を用いた。ERからの分泌に欠損をもつ変異株はオートファジーが不能となることから、オートファゴソーム膜形成にERからの分泌が必要であることが示された。また液胞の脂質を蛍光染色すると、飢餓下にはオートファゴソームが染色されることから液胞からオートファゴソームへの膜の流れが存在することも判明した。これらは、小胞体や液胞がオートファゴソームの膜供給源になりうることを示唆している。 又、飢餓時には分泌経路の蛋白質が積極的に液胞へと輸送されことを明らかにした。ERの一部は飢餓ストレスによりオートファゴソームに取り囲まれ液胞へと運ばれる。通常ゴルジ体に局在する蛋白質も液胞へと輸送されるが、その輸送機構はERの場合とは異なりオートファジーによらず、エンドソームを経由する。さらに細胞増殖時には分泌される蛋白質も飢餓条件下には液胞へと運ばれる。細胞内には飢餓時に特有の膜動態が存在することが明らかにされた。
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