第一に、中国とベトナムの穀物STE(国家貿易機関)の民営化と独占解消の背景について検討した。中国の穀物STEについては、民営化により多角化と世界展開が急速に進んだ。米貿易に関しては、ジャポニカ米において外国商社等との独自契約が先行し、一部民間業者にも輸出権を認めざるをえないような状況が生じ、他方で穀物STEと本社は香港民間商社とのインディカ米貿易における技術提携に重点を置いていた。ベトナムについては、世界貿易において当初の低価格から中級米以上にシフトする必要性が生じ、その市場圧力により、国有企業改革圧力と地方分権圧力が複合的に地方に有利な流通規制緩和を実現した。こうして民間業者の流通支配が拡大するとともに、それにならう穀物STE傘下の地方公社の本社である穀物STEからの事実上の分離が進んだ。 第二に、米の輸入国側の、インドネシア・マレーシア・フィリピンの穀物STEの解体について検討した。米の輸入が事実上自由化されたのはインドネシアだけであり、他の二カ国は、民営化(株式化)されたとはいえ事実上の独占を継続している。インドネシアの場合は形式上のBULOGの独占が実はスハルトファミリー企業の排他的寡占であり、政治システムそのものが一度崩壊した以上、IMF勧告の有無に関わらず、自由化されざるをえなかった。その隙間を埋めたのはこれまで機会をうかがっていたスハルトファミリー企業グループ以外の華僑系商社であった。 第三に、インターネット、電子ジャーナルの情報を集めながら、米貿易の電子化の実態を把握した。その結果、USDAよりも細かな価格情報提供、各国の生産状況や政策情報、インターネットを通じた米取引相手をさがす場の提供、電子決済などの技術指導などがインターネットを通じて行われているが、参加者の多くが今のところ印度系業者に偏っており、必ずしも普及している訳ではないことが分かった。
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