本年度は、高分解能電子顕微鏡下での構造を測定するための双結晶の作製、地殻下での粒界クラック生成条件を探るための粒界破壊観察、状態図と二面角の関係を探るための組織解析、シリコンの粒界および体拡散係数から粒界エネルギーを見積もる方法の確立を試みた。 板状の石英単結晶を二つ用意し鏡面同士を張り合わせ、加重下での熱処理により双結晶作製を行った。もう一つは、結晶方位差一定で1粒界に様々な粒界面を導入することが可能な円錐形の雌型と雄型を用意し、それらを埋め込み熱処理をおこなった。昇・降温過程においてクラックが発生し、試料作製の最適条件を探索中である。 高温ステージにメタチャートを載せ、反射顕微鏡下で粒界破壊観察を行った。250度から1200度にかけ緩やかにクラックが発生し、ほぼすべての粒界が1200度までに破壊することが判明した。また、クラックは粒界のみに発生する。この事実は、石英粒子の熱膨張係数の大きな異方性が昇温中に界面応力を発生させ破壊に至ることを示す。 二面角測定の材料として、有機物系からしょうのう-ナフタレン、金属系から銀-ニッケル、コバルト、銅、鉄、岩石系から石英-長石、オリビン-輝石を選び、それらの多結晶体を作製し二面角の測定を行っている。多くは二面角の測定に至っていないが、岩石系においては二面角の測定により、異相界面エネルギーが粒界エネルギーより低いことが判明している、共融点を持つことかが異相界面エネルギー値を下げる原因であると予想される。 オリビンのシリコン自己拡散係数と粒界エネルギーがBorisovの半経験的関係則に従うことが分かった。拡散係数の分かっているウォズレライト、ペロブスカイトおよび石英にこの関係則を適用し温度依存型の粒界エネルギーを求めた。また、石英においては、粒界に水が偏析することにより、粒界エネルギーが無水時のそれよりも1/10ほどに下がることが示された。
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