本年度、7月中旬までの限られた研究期間であったが、二面角と状態図の関係を探る研究において成果を挙げることができた。使用した系は、銀-ニッケル、コバルト、銅、鉄、シリコンで、すべて二相系である。すべては、粉末を混合、焼結、加工、表面研磨、サーマルグルービングという処理を経て、二面角を走査型電子顕微鏡法により測定した。例えば、銀vsニッケル・ニッケル、ニッケルvs銀・銀の二面角を測定することで、銀粒界エネルギーを基準とした、すべての粒界・異相界面エネルギーを求めることが出来た。それによると、まず、粒界エネルギーは、これまで言われてきたように、それぞれの相の融解エンタルピーと見事な線形関係が成立する。また、異相界面エネルギーと液相での混合エンタルピーに正の相関関係があるのを見出した。つまり、異相界面においても、その界面構造・化学組成が二成分の混合液相のそれに近いことを示している。このことは、状態図の形より、その組成で形成される粒界。異相界面の構造・化学、エネルギー状態の予想を可能にする。また、その逆の、二面角の測定より、状態図の形を予想できることを意味する。水が共融効果を抑える系、例えば、フォルステライト・エンスタタイト系が挙げられるが、マントル岩のオリビン-単斜輝石に発達する二面角を測定することで、岩石中の含水量を推定することが可能になると思われる。 現在、これらの結果・考察をまとめ、論文作成に従事している。
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