5-ハロウラシルの光反応性を利用したZ型DNAの生物学的役割の解明

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02J10982
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 大吉 崇文 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 特別研究員(DC2)
• キーワード: Z型DNA / RNA編集 / 光反応 / 5-ハロウラシル / DNA結合タンパク / DNA局所構造 / Zαタンパク / C2'α位水酸化体

研究概要

2本鎖RNAアデノシンデアミナーゼI(ADARI)のN末領域であるZαタンパクにより誘起されたZ型におけるd(CGCG^IUGCG)(ODN1)/d(Cm^8GCACm^8GCG)(ODN2)の光反応性を詳細に調べるために、まずZαタンパクの添加によってODN1-2がZ型構造に誘起されるかどうかをCDスペクトルによって調べた。2本鎖DNAに対して2等量のZαタンパクを加えると典型的なZ型DNAのCDスペクトルが観察できた。この結果はZαタンパクの添加によってODN1-2がB型構造からZ型構造に転移することが明らかとなった。
Zαタンパクにより誘起したZ型DNAにおけるODN1-2の光反応性を調べた。ODN1-2に2等量のZαタンパクを加えZ型とし、0℃で302nmで光照射した。照射後の溶液をHPLCによって分析した結果、5-ヨードウラシルを含むODN1が減少し、ODN1の4番目のグアニンがC2'α水酸化したd(CGC)rGd(UGCG)が主に生成することが明らかとなった。
ODN1-2に様々な濃度のZαタンパクを加えたサンプルを光照射し、Zαタンパクによって誘起されたZ型構造の量に比例してC2'α位水酸化体が生成するかどうかを調べた。その結果、Zαタンパクの量を増加させるとリボヌクレアーゼT1処理により生成するd(UCGC)も増加することが明らかとなった。このことはグアニンのC2'α位の水酸化がZ型構造をとっている割合を反映していることを示している。これらの結果より、光反応とリボヌクレアーゼT1による酵素処理を組み合わせることでZ型構造の検出と定量ができることが示された。
本研究により5-ハロウラシルの光化学反応とその後の酵素分解を組み合わせることによって、DNA中に生じるZ型DNA領域を検出することが原理的に可能であることが示された。

研究成果

• [文献書誌] Takanori Oyoshi, Andrew H.-J.Wang, Hiroshi Sugiyama: "Photoreactivity of 5-iodouracil-Containing DNA-Sso7d Complex in Solution : The Protein-indicated DNA Kinik Causes Interstrand Hydrogen Abstraction from the 5-Methyl of Thymine at the 5'Side"J.Am.Chem.Soc.. 124. 2086-2087 (2002)
• [文献書誌] Iiyama, T., Chikira, M., Oyoshi, T., Sugiyama, H: "Deglyco-Peplomycin Metal Complexes on DNA-Fibers : A Role of the Sugar Moiety for the Stability and the Orientation on the Complexes"J.Bioinorg.Chem.. 8. 135-140 (2003)
• [文献書誌] Oyoshi T, Kawakami W, Narita A, Bando T, Sugiyama H: "Inhibition of Transcription at a Coding Sequence by Alkylating Polyamide"J.Am.Chem.Soc.. 125(in press). (2003)
• [文献書誌] Oyoshi T, Kawai K, Sugiyama H.: "Efficient C2' α-Hydroxylation of Deoxyribose in Protein-Induced Z-Form DNA"J.Am.Chem.Soc.. 125. 1526-1531 (2003)