この系RuSr_2RECu_2O_8(RE:rare-earth)において報告されている物性測定のほとんどは多結晶体試料で行われたものであり、単結晶試料を用いて行った実験の報告はほんの数例しかなく、得られている単結晶試料も数百?オーダーの非常に小さなものである。この系における超伝導と強磁性の共存機構を解明するための詳細な実験結果を得るためには、単結晶試料を用いた測定が必要不可欠である。そこで、今年度も我々はこの物質の単結晶育成を試みてきた。まず、現在単結晶が得られているグループの報告を元にRE=Gdの試料に関して、CuOをフラックスとした常圧下での育成を行ったが、単結晶試料を得ることは出来なかった。また、RE=Yの試料にフラックスとしてCuOを混ぜたものを超高圧下で昨年度よりも高い温度で熱処理を行うことにより、単結晶育成を試みたがこちらも単結晶試料を得ることができなかった。 一方、これとは独立にNbB_<2+x>における?SR測定を行った。?SR測定においては、MgB_2と同様の結晶構造を持つこの系における超伝導gapの対称性がどうなっているのかを調べること、また、硼素の含有量の違いによってT_cが変化することの原因を探ることを目的として研究を行った。その結果、NbB_<2.1>(仕込み組成)の試料における磁場侵入長の温度依存性の振る舞いは二流体モデル(BCS理論)で説明が出来なく、異方的なgapの対称性を持つ超伝導体であることを示唆する結果が得られた。しかし、磁場侵入長の磁場依存性の振る舞いは典型的な等方的なgapをもつものとして説明が出来るものであった。現在のところこれらの矛盾を説明することはできないが今後解明したいと考えている。また、様々な仕込み組成におけるT_cのミュオンスピン緩和率依存性の振る舞いは銅酸化物高温超電導体におけるものと非常に類似しており、この系におけるT_cがキャリア濃度に依存していることを示唆する振る舞いが観測された。
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